「折木」と「伊原」

 米澤穂信先生の<古典部>シリーズでは、主要登場人物である古典部メンバー4人の互いの呼び名は、皆が皆ちがっていてそれぞれの個性や距離感を表す面白い小道具になっています。*1

 その中で誰と誰との間が一番遠いかと言えば、これは互いを名字の呼び捨てで呼び合う「折木」と「伊原」でしょう。

 しかし、「鏡には映らない」にて伊原は折木への誤解を解き、この一年の付き合いも合わせて彼への評価を改めます。それが如実に表れたのが、「いまさら翼といわれても」での、「あ、折木もきいてよ」と謎解きを期待するシーンだと思います。折木が謎を解くこと自体、生意気だと思っていたような伊原がデレるところは見ものです。

 しかし、キャラ付けが固まっているせいか、こうなっても呼び方は変わりません。二次創作でも、伊原が折木をあだ名で呼ぶようになるのは見たことがありません。*2

 なら、どんな呼び方がありえるだろう? と、ちょっと考えてみます。

 伊原は名字をひねったものに「ちゃん」付けしてあだ名を作る癖を持っています。で、ありながら、作中に登場した3つのあだ名の作り方はそれぞれ別なのです。

 列挙すれば、

  1. ふくちゃん‐福部里志。名字の頭2モーラを取るタイプ
  2. ちーちゃん‐千反田える。名字の頭1音を取って呼びやすく整えるタイプ
  3. ひなちゃん‐大日向友子。名字の中で目立つ部分を取るタイプ

と、なります。

 以上三つのパターンを折木おれきという名字で行うと、パターン1なら「おれちゃん」*3、2なら「おーちゃん」、3なら「れきちゃん」、といったところでしょうか。私は3「れきちゃん」を推します。

追記

 このあたりに触れている二次創作:#〈古典部〉シリーズ #福部里志 呼び捨て - 氷室まんじゅうの小説 - pixiv

*1: この点について分かりやすい資料(呼称表):誰が誰を何と呼ぶかという距離の問題(氷菓) - 砂手紙のなりゆきブログ

*2:恋愛関係になって、下の名で呼ぶようになるのはあるが。

*3:折木の一人称は「俺」なので、「おれちゃん」だと、一人称の趣味をからかうような響きになるかもしれませんね。「ボクちゃん」がそうであるように。「一人称ちゃん」も参照のこと。