毒の沼地の変遷


記事「『毒の』沼地」の追加のようなものです。

 

DQ1

 

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 南側、海の向こうにあるのが竜王の城である。この周りにあるのがドラクエ*1の毒の沼地であり、世界観を印象付ける存在である。



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 DQ1のマップのうち、毒の沼地を赤で示した。
 DQ1というと、ロトのしるしの埋まった広大な沼地が印象深いが、沼地自体はこのように、ごく普通に存在するものであった。
 沼地の洞窟、メルキドの手前、竜王城の手前(あとついでに竜王城最深部)と、通り道に毒の沼地が設けられているのがうっとおしく、その分、毒の沼地を無効とするロトの鎧のありがたさも格別であった。

 

 



DQ2

 

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 DQ2においても毒の沼地は一般的なものであった。ラーの鏡の埋まった沼地や荒廃したムーンブルク城周辺、ロンダルキアへの洞窟の入り口など印象深いもの以外、例えば、スタート地点のローレシア城から次のリリザの町への途中にも普通に存在した。
 アレフガルド(北西の内海にある四角形の諸島)では、DQ1と同じ個所に毒の沼地があることに注目してほしい。
 ローレシアの城の北にある、毒の沼地に縁どられた湖は意味ありげだが、実はなにもない。

 

DQ3

 

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 だが、DQ3では大きく減少し、最初の毒の沼地はゲームをかなり進んだ「イシス東のほこら」である。このように不気味な印象を与えるための「穢れ型」の毒の沼地としては、他にギアガの大穴周辺やサマンオサ南の洞窟周辺がある。対して、そのような意味合いを持たない「天然型」な毒の沼地は南北アメリカやアフリカに(相当するところに)わずかに見られる。

 

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 イシス東のほこら。毒の沼地に囲まれおどろおどろしい雰囲気だが、中には魔法の鍵のことやイシスの場所を教えてくれる人がいるだけ。拍子抜けである。

 

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 DQ3におけるアレフガルド。毒の沼地の場所自体はDQ1とほぼ同じだが、面積は小さめである。

 

DQ4

 

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 そして、DQ4。表マップでは、何と、銀の女神像の洞窟周辺にしかない(モンスターたちの城であるデスパレスも普通に草原に位置している。裏マップの「闇の世界」はさすがにその名にふさわしく毒の沼地だらけなのだが)。

 

 これでは、ドラクエの世界にもラムサール条約が必要だろう。

 

 なお、この銀の女神像の洞窟については、なぜ毒の沼地で囲まれていなければいけないのか、その理由が筆者にはよくわからない。この洞窟は宝探しのための遺跡であり、ボスがいるような魔物のアジトというわけではない。「銀の女神像」も特殊効果のない普通のアイテムであり、「黄金の腕環」のように実は邪悪な存在だった、ということもない。
 強いて言えばこの洞窟は水を使った仕掛けがあるので、湿潤な環境を表しているのかもしれないが、それなら川で囲んだ方がよかったのではないだろうか。

 あと一つ、見た目だけだがゴットサイドの島にも一マス沼地が存在する。この島に侵入し拡大マップに切り替わると、南側・天空の城周辺に沼地は広がっている。この島には「闇の世界」に通ずる「地底への洞窟」が所在するので、これはその影響かもしれない。

ゴットサイドの島

 

DQ5

 

 前作ほど極端に少なくはないものの、多いとも言えず、また特に意味を持たない「天然型」ばかりである。つまり、茂みのようなアクセント的地形として扱われている、ということかもしれない。

 

 最初のものは、いわゆる青年時代前期の、「サラボナへの洞窟」からサラボナへ至る経路の脇に見られる。次のものは、「チゾットへの山道」のまん前に広がっており、ここを突っ切らないと山道には入れない(そういう場所に何気なく毒の沼地を配するところにDQ5の毒の沼地に対するセンスが現れていると思う)。そして、マップ中央の「妖精の城」や「天空への塔」のある島の南東部にも存在する。

 

 なお、この作品にも裏マップの「暗黒世界」が存在するが、「穢れ型」の典型というべき広大な毒の沼地が複数存在する。中でもラストダンジョンのエビルマウンテンの南にある毒の沼地は、エンディング後の隠しダンジョンがあることで知られる。



 さて、DQ5の表マップ(つまりは人間界)に「穢れ型」の毒の沼地がないことは、このゲームの設定にふさわしいと思う。「穢れ型」は、DQ1のように、ある日突然大魔王が現れ世界が危機に陥りました、という世界のヤバいところを示すのに適している。
 それに対しDQ5は、大魔王ミルドラースは太古から存在しており、パパスが危機を覚え勇者を探し出そうと決意した時を起点としても、冒険の旅の途中でマーサと出会い主人公を儲けて、そのまた子供である勇者がある程度大きくなるまで、つまり1.5世代分くらい大魔王の脅威にさらされ続けながらもそれなりに社会が続いてきた、茹でガエルのようにじわじわじわじわと危機に近づいて行った世界なのである。
 こんな世界には、危機の明白な徴候である「穢れ型」の毒の沼地は似合わない。と、いうか、そんなものが出現していないからこそ、ある程度普通に社会が続いてしまったのがDQ5の世界なのだと思う。

*1:目にするという意味で。実際に最初に足を踏み入れるのはここではない。