お断り:竜のうろこを贈る場面は本編にすでにあるので、これはその別バージョンです。
「そなたら、これを持っていくといいのじゃ」
竜王の城でのひとときの休息を終えて、再び冒険の旅に発とうとするロトの子孫たちを、城のあるじである「竜王のひ孫」リュオは呼び止めると、青・緑・赤紫、彼ら三人それぞれにふさわしい色の掛け紐で彩られた、手のひらほどの平たい品物を手渡した。
「これは……?」
三人を代表するかのように問いかけたサマルトリアのサスケに、リュオはちょっと得意げに答えた。
「『竜のうろこ』じゃ。そなたらの身の助けになろう」
言われてみればその大きさは並外れているものの、つやつやと光を弾くそれは爬虫類のうろこに間違いはなかった。ロトの勇者も護持していたという一品だ。
「ありがとうございます」サスケは素直に礼を述べ、うろこを懐に仕舞った。
ところが、素直でないものもいた。ローレシアのロウガである。裏にひっくり返しまた表に返し、灯りに透かし陰に置く、隣にいたムーンブルクのムラサキが止めなかったら、噛みごこちも試していたかもしれない。
その興味深々の目が、リュオに向いた。ムラサキの目も、つられて向いた。
「な、なんなのじゃ、そなたら?」居心地悪そうに身を揺すりながら、リュオが問い返した。
「えーと」
「このうろこは、誰のものなのかしら」
じっと見つめる四つの目に、リュオは口ごもる。
「そ、それは無論ドラゴンの……」
四つの目は、リュオの紫の衣を見透かすように固まっていた。リュオのもともと白い顔が、白を通り越してあおざめてきた。
「……す、済まないのじゃ。儂自身のうろこであれば良かったのじゃが、これは、父のものじゃ」
「なーんだ」
「そうだったの」
リュオの白状に、ロウガの方は単にリュオにうろこが生えていなかったことに拍子抜けした感だったが、ムラサキの方はそれに加えてなにか当てが外れたような響きがあった。
「お父上の遺骸ですか、それは大事なものを預からせていただきます」サスケがとりなした。