#小説

「竜のうろこ」異聞

ドラクエ2の二次創作「竜王のひ孫と」の外伝

#いやらしいわねムーンちゃん

DC星のくず (@DC306DC) / Twitterさんが提唱したtwitterタグ #いやらしいわねムーンちゃん にインスパイアされたもの。うちの子でやるとお色気から外れてしまうのだ。 「いやらしいわね」ムーンブルクのムラサキが、眉間に寄せた皺で整った顔を乱しながら、…

「私のリミット」IFルート

これは、松尾由美先生の小説「わたしのリミット」の二次創作で、具体的には第四章の途中から別の流れに入るまでのところです。なぜこんなものを書こうと思ったのかは、私の感想記事のうち、「IFストーリーを考える」の節をお読みください。

竜王のひ孫と(その一・ラダトーム)

DQ2の二次創作である「竜王のひ孫と」シリーズの一番始めです。 宿敵・大神官ハーゴンへの手がかりを求めて、いよいよ港町ルプガナより大海に乗り出し、古都ラダトームを訪れたロトの勇者たち三人。そこで、勇者の一人・サマルトリアのサスケは気掛かりな…

竜王城の危機・その三(完結)

「その二 http://blogs.yahoo.co.jp/ryuougodai/69247533.html」の続きです。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― リュオとジャトウの戦いは激しいものとなった。リュオは確かに「魔王の爪跡」の力を己のものにしていなかった。だが、竜王、竜王…

竜王城の危機・その二

「その一」の続きです。 黄色く立ち枯れた葦原を、風が波立たせて渡っていく。空は、薄青く霞んでいる。 竜王のひ孫・リュオは、紫色した竜王の戦装束に身を固め、竜王城の地上部の廃墟の中で、一人、身構えていた。広大な湿原の中、いま彼女のいる所だけが…

竜王の城へ

海沿いの峠を越えると、緑の平原の先に、灰色の小さな影が見えてきた。ローレシアのロウガ・サマルトリアのサスケ・ムーンブルクのムラサキの、勇者ロトの子孫たち三人が一歩一歩あゆみを進めるたび、その影は次第に大きさと細かさを増し、甍を連ねた街並み…

魔法の衣装

「どうしてムラサキ殿となかよくできないのじゃろ……」 机に顔を伏して一人悩んでいた、竜王のひ孫・リュオの背後で、突然、空気が揺らめいた。隙間風もないのに空気が渦を巻いて明滅したかと思うと、中から、長い黒髪を後ろに撫で付け青いジャケツを着た洒落…

りゅおゆう

「なあなあ、ひ孫。ひ孫はなんでそんなに『びじん』なのに、さいしょの時わざわざ顔隠してたんだ?」 遊びに来ていたローレシアのロウガにそう真顔で問いかけられて、竜王のひ孫・リュオは思わず顔を赤らめた。 「あんとき行けって言われてたら、オレ、すぐ…

二人で留守番

ムラサキ:何故あたしとロウガの二人っきりなのかしら? ロウガ :ベラなんとかの町でサスケが倒れたから? ムラサキ:うん? なんか違うわよ。そうじゃないでしょ? ロウガ :あ、思い出した! ひ孫がサスケと一緒にぼうけんに出たから、オレたちはひ孫んち…

竜王城の危機・その一

勇者ロトの子孫たち3人が、ついに悪の元凶・大神官ハーゴンを倒すという、最後にして最も険しい征旅に出てより数週間、竜王のひ孫・リュオは毎朝欠かさず、彼らの無事を天なる神と大地の精霊ルビスに祈っていた。 祈りが終わると、たまらずそおっと様子を窺…

がっかりリュオ

2012年のお正月に振ったネタをももこさんにイラストにして頂けました。こういうのっていいですね。 ①「ドラゴン」って凄い職業があるそうよ。 ②でも、見た目は変わらないよ。 ③えっ ④まあまあ それにしても、ロウガが割り食ってますね~。彼は驚いてばっかり…

ひ孫の日記(DQ2二次創作)

独立したSSです。 ×月×日 悪魔神官が家賃の取り立てにやってくる。竜王の城はもともと儂のものなのに。 今に見てろよ。 ×月×日 いよいよ、噂に聞いていたロトの子孫たちがやってきた。この城のモンスターも決して弱くないのに一番奥の儂のところまで平気で突…

ラダトームの市場にて・バリエーション

「ラダトームの市場にて」のあたりでありえたかもしれない1シーンが頭に浮かんだのでちょっと書いてみました。外出用の頭巾姿のリュオと、彼女に出くわした三人です。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「あれ?」ロウガが突然素っ頓狂な声を上…

四訪竜王城(その5)

「あ~、くったくった」鋼の籠手で鎧の腹部を叩いてがんがん音を立てているのは、ローレシアのロウガだった。 「あんたね、少しは遠慮しなさいよ! 仮にも一国の王子なのに乞食みたいに! ホントにあんだけ自慢話しながらなんでそんなに食べれるのよ?」ムー…

神々と勇者たち

四訪竜王城(その3)で止められていなかったら、ムラサキが精霊ルビスに叩きつけようとしていた内容についての番外編です。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「なぜ、神はムーンブルクを救ってくれなかったの? 神はどこにいるっていうの?」…

ムーンブルク国にて

設定説明的な番外編です。 ローレシアの王子ロウガがたき火から顔を上げると、炎の向こうでサマルトリアの王子サスケが難しい顔をしていた。 「どうかしたん?」 「そうですね、聞いてもらえますか?」 サスケはいつも話しかたがていねいだなぁ、そんなこと…

四訪竜王城(その4)

重い玉座を元の位置に戻し縦穴に蓋がされて、ロトの子孫と竜王の子孫の4人は、夏の刺すような日差しの中を歩き続けた旅人がようやく身を憩う日陰を得た時のように、肩を落とし深く息を吐いた。 「これ、返すわ」 リュオ・サスケ・ロウガの三人が玉座を動か…

四訪竜王城(その3)

「じゃが、それが今は助けとなる」 こんな腐れ風が好都合って、どういうことなの? ムラサキの問いただすような視線を向けた時は、リュオは動き始めていた。 紫の長衣の襞の間から、流れるような動きで三重の旋律とともに取り出されたものは、預けられていた…

四訪竜王城(その2)

「さて」リュオは扉に寄ると、その細い腕にふさわしからぬ怪力で、一抱えもある太い閂を掛けた。ズン、と床が揺れる。 「なんのつもり?」 ムラサキがリュオに問いかける。階上には怪物も出現するというのに、あるじの自信を示すものか、この屋敷を訪れた時…

四訪竜王城(その1)

最後の冒険への準備を整えて、(旧)竜王城を訪れてみると、そこは果物の焼けた、甘い匂いに包まれていた。 ジュルッ、と音を立ててツバを飲み込んだ者がいた。もちろんローレシアのロウガ王子である。 「コラ! 何やってるの!」 ムーンブルクのムラサキに…

「リュオさんネコになる」その7

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「リュオさんネコになる」その0

「性懲りもない」 顔の周りを蠅が飛ぶ時の羽音のような、微かであっても頭の奥にまで届いてくる不快な感覚に、竜王のひ孫・ロンワンは首をよじって後ろを振り向いた。 彼が思った通り、「呪い」がそこに浮いていた。常人の目には見えず感じることもできない…

「リュオさんネコになる」その6

リュオが広間にお茶を持って入ると、中では3人が楽しそうに歓談していた。主に騒いでいるのはロウガで、どうもロンワンの冗談がツボにはまったらしい。 そういうわけで、最初にリュオに気づいて顔を向けたのはムラサキだった。彼女は特に口は開かなかったが…

「リュオさんネコになる」その4

「リュオさん。候補は四人もいるぞ? さぁ、どうしますか?」 ロンワンは、にこやかに笑いながら問いかけた。 「う……」リュオの足が、一歩後ろに下がった。 「さっ、どうする?」 そこを押して、ロンワンがぐっと前に乗り出した。 「う……あ……」 リュオが、ず…

「リュオさんネコになる」その2

「わたしなら、そんな回りくどい事しませんね♪」 ロンワンの、へらへらした笑顔・無責任なほど飄々とした物言いに、なぜかいつも納得させられるリュオであった。理屈立てて考えれば、はっきり言って信用できない相手である。何しろ、相当手間がかかるであろ…

続・ラダトームの市場にて

「ラダトームの市場にて(改)」http://blogs.yahoo.co.jp/ryuougodai/63615184.htmlの続きです。 「さて、」ぱんぱんと手を叩いて場を区切ると、ムラサキはずずいっとリュオに顔を寄せた。そうすると、遠目には秀麗に見えたその顔も、長い征旅の疲れか、い…

ラダトームの市場にて(改)

お断り この記事は、番外編の一編であった元のものを、本編に組み込むために修正をかけたものです。新作ではなくて済みません。 本文 「紋章」を求めて南方を巡ること数か月―ーロトの子孫たちは、久々にラダトームへ戻って来た。 「次は薬草の店?」 ローレ…

十年前の4人

ふと、うちの「竜王のひ孫と」のメインキャラクター4人は十年前、どういう風だったのかが気になった。 なぜ、そういうことを考えたかというと、某ハロウィン絵を拝見して、リュオが、本人が好んで主役張るなら、トリック・オア・トリートする方じゃなくて、…

犬になる王女(DQ2掌編)

王女なんてつまらないもの、そう悟ったのは七歳の時だった。別に早くはないと思う。 なにしろ周りには二種類の人間しかいない。わたしより偉い人間と、わたしより偉くない人間だ。私より偉い人間――私の父でもある王や、私付きの教師――は私の事情など少しもか…