2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

四訪竜王城(その5)

「あ~、くったくった」鋼の籠手で鎧の腹部を叩いてがんがん音を立てているのは、ローレシアのロウガだった。 「あんたね、少しは遠慮しなさいよ! 仮にも一国の王子なのに乞食みたいに! ホントにあんだけ自慢話しながらなんでそんなに食べれるのよ?」ムー…

神々と勇者たち

四訪竜王城(その3)で止められていなかったら、ムラサキが精霊ルビスに叩きつけようとしていた内容についての番外編です。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「なぜ、神はムーンブルクを救ってくれなかったの? 神はどこにいるっていうの?」…

ムーンブルク国にて

設定説明的な番外編です。 ローレシアの王子ロウガがたき火から顔を上げると、炎の向こうでサマルトリアの王子サスケが難しい顔をしていた。 「どうかしたん?」 「そうですね、聞いてもらえますか?」 サスケはいつも話しかたがていねいだなぁ、そんなこと…

四訪竜王城(その4)

重い玉座を元の位置に戻し縦穴に蓋がされて、ロトの子孫と竜王の子孫の4人は、夏の刺すような日差しの中を歩き続けた旅人がようやく身を憩う日陰を得た時のように、肩を落とし深く息を吐いた。 「これ、返すわ」 リュオ・サスケ・ロウガの三人が玉座を動か…

雨露の糸

水の羽衣の材料として知られた雨露の糸、これを用いるには聖なる織り機とドン・モハメの腕が必要、と思っていたのですが……見直してみれば、雨露の糸の情報が得られるのはラダトームの「お裁縫の店」、設定上はそこで普通に売られている品物なのです。 と、い…

四訪竜王城(その3)

「じゃが、それが今は助けとなる」 こんな腐れ風が好都合って、どういうことなの? ムラサキの問いただすような視線を向けた時は、リュオは動き始めていた。 紫の長衣の襞の間から、流れるような動きで三重の旋律とともに取り出されたものは、預けられていた…

四訪竜王城(その2)

「さて」リュオは扉に寄ると、その細い腕にふさわしからぬ怪力で、一抱えもある太い閂を掛けた。ズン、と床が揺れる。 「なんのつもり?」 ムラサキがリュオに問いかける。階上には怪物も出現するというのに、あるじの自信を示すものか、この屋敷を訪れた時…