#読書

「瑠奈子のキッチン」メモ

登場人物の名前の流用と、各種文学作品の引用に特色のある松尾由美作品のメモ。

なんだいミステリ研シリーズの一覧

光原百合先生の創作した、吉野桜子を主人公とし浪速大学ミステリ研究会(通称なんだいミステリ研)を舞台とする小説群の一覧の覚え書き。 〇「遠い約束」 創元推理文庫、桜子の大おじの遺言を巡る長編。 文春文庫「やさしい共犯、無欲な泥棒」に再録 〇「や…

花は散るために咲くのか

「花は散るために咲く」という言い回しが、阿刀田高先生の小説「怪しくて妖しくて」に出てきた。原典は知らない。 かなり強い文句である。反感を覚えるし、反論したくなる。 しかし、これを逆にして(対偶ではない)、花は永久に咲くように出来ているか、と…

「モーリスのいた夏」松尾由美・著

「モーリスのいた夏」の感想

岡本綺堂「中国怪奇小説集」備忘

岡本綺堂先生が選んだ中国怪談傑作集から、興味深かったところの覚え書き。 虎の難産 天使 白帯の人 烏龍 蛟を生む 七聖画 陳巌の妻 李生の罪 鬼国 雨夜の怪 両面銭 虎の難産 産婆が(化生でない)虎のお産に連れていかれて、お礼もあった話。 天使 三国志の…

「異形コレクション・綺賓館」に見る雪女と人魚の呼称

「SEA-WYF雑感」の記事で人魚という言葉にバリエーションがないのでは、と述べた。 ここに、現代日本の代表的な怪異譚のアンソロジーに「異形コレクション・綺賓館」がある。生き延びた古典と現代の新作を織り交ぜた編集方針からも、雪女と人魚がどのように…

並べてあげてくれるな――松尾由美と倉知淳

東京創元社が推理作家を集めて、それぞれがデビューしたころの思い出をエッセイにしてもらって、それをデビュー年順で並べた「わたしがデビューしたころ」という本がある。そこでは、1991年の松尾由美先生と、1993年の三人のうち倉知淳先生が隣り合っている…

「スパイク」と「九月の恋と出会うまで」

松尾由美先生の小説「スパイク」(単行本2002年刊)を読んでいて、いろいろと「九月の恋と出会うまで」(単行本2007年刊)の原型となっているのに気がついた。

松尾由美・著「嵐の湯へようこそ!」の主人公姉妹について

松尾由美先生の新著「嵐の湯へようこそ!」は、簡単に紹介すれば、ひょんなことで銭湯「嵐の湯」の経営者となった佐久間姉妹の前に押し寄せる、銭湯に持ち込まれる謎・銭湯自体の謎・そして危難……といったところだろうか。とはいえそれは表面だけのことで、…

「ニャン氏」シリーズに足りないもの

「ニャン氏」シリーズの田宮宴と岡崎はお似合いかもしれない。

「レインレイン・ボウ」ナイン一覧

加納朋子先生の小説「レインレイン・ボウ」はかつての高校ソフトボール部ナインのその後を描いた連作短編集なので、当然ながら同じ年頃の女性ばっかり出てきて混乱する。そこで頭の整理にまとめたもの。 主役話 職業 学年(最終時) 呼び名 メモ 牧 知寿子 ―…

財産という名の負債

廣嶋玲子作品の、しばしばある構図について。

「白の王」の数字感覚

廣嶋玲子先生の書かれたファンタジー小説「白の王」、いい話だと思う。 『白の王』|感想・レビュー・試し読み - 読書メーター しかし、重箱の隅をつつくような話だが、私とは数字の感覚が合わない点が三つある。それを書いておく。 人狩りの噂のこと 死繰り…

ガラスの動物たち

加納朋子先生の「ガラスの麒麟」から始めて、そういえば題名だけ知っていて中身も何も知らないな、と高木敏子先生の「ガラスのうさぎ」を読み、ついでと言っては何ながら、題名が「ガラスの(動物名)」となっているものとして、新堂冬樹先生の「硝子の鳥」…

「狐霊の檻 」廣嶋玲子・著

www.komineshoten.co.jp 富をもたらすがゆえに、とある一族の屋敷に囚われてしまった狐の精霊と(稲荷っぽくはないな*1)、精霊の同情を惹くために世話係として買われてきた孤児の少女の、屋敷からの脱出譚である。廣嶋玲子先生らしく、またジュニア向けとい…

「煙とサクランボ」松尾由美・著

想いよ届け。すべての謎が解かれる前に。 単行本のオビより 松尾由美先生の小説「煙とサクランボ」のタイトルは、この本の第3章で説かれるように、見ることはできるがしっかりした形のないタバコの「煙」に象徴される幽霊紳士氏と、瑞々しく美しい「サクラ…

「秘密結社の時代 鞍馬天狗で読み解く百年」海野弘・著

大佛次郎の「鞍馬天狗」を題材に、幕末から百年の日本の秘密結社を語る……はずだが、鞍馬天狗も小秘密結社、敵集団も秘密結社と呼んでみるばっかりで、その方面には深い話にならないところがビックリである。「鞍馬天狗」にも秘密結社にも詳しくなった気がし…

「隅の老人」に感じる松尾由美感

子供のころよりウン十年、久方ぶりにバロネス・オルツィの「隅の老人」を読み返した。とは言え、今回は新たに出版された【完全版】であるが。 読んでいて感じたのが、松尾由美先生のものに似た雰囲気である(無論、実際はオルツィ先生の方がずっと古いのだが…

「影をなくした男」シャミッソー・著

「わたしのリミット」作中で触れられていたので、何か新しい発見がないかと読んでみた。なお、登場したのは「子供向けの本」だが、私が読んだのは岩波文庫版である。 結論から言えば、「リミット」の読み方が変わるようなことはなかった。作中のあらすじは良…

遠藤律子と松尾由美

松尾由美先生の二つの作品、「おせっかい(幻冬舎単行本 2000/6)」と「ブラック・エンジェル(創元推理文庫 2002/5)」の表紙は共に、遠藤律子という方が描かれた、内容とは直接関係のなさそうで、しかもお互いよく似た、ヒエロニムス・ボス風のシュールレ…

アロイシャスとケルビーノ(付・松尾由美作品の猫たち)

注:この記事を私が書いたのは、「ニャン氏」シリーズ第三巻「ニャン氏の憂鬱」を読む前のことです。 松尾由美先生の「ニャン氏」シリーズの探偵猫アロイシャス・ニャン(通称ニャン氏)、彼はだいたい真っ黒な猫で、顔の下半分と手足の先とお腹が白いタキシ…

「異次元カフェテラス」松尾由美・著

悪評は書くものではないと思うが、「異次元カフェテラス」は、かなりマイナーな本なので、あえて記録しておこうと思う。 この本は松尾由美先生の初めての本であるが、正直言えばあまり面白くなく、無理に探してまで読むことはないと思う。ただ、この本はロッ…

心あたりはあるのだが

米澤穂信先生の古典部シリーズの短編「心あたりのある者は」は、ゲームとして推理を始めたのに、調子に乗って進めていたら、終わった時には目的を忘れていた、という、全体としてみたら喜劇な作品です。しかし、折木は本当にゲームの目的を忘れていたのでし…

単行本「遠まわりする雛」米澤穂信・著についてのメモ

この記事は、ネタバレを含みます。

「凍りのくじら」辻村深月・著

私には合わなかった一冊。 「わたしのリミット」に似ていると聞いたので試しに読んでみたが、片親を亡くした女子高生が、不可思議な形でその親と再会する、と、おおざっぱに纏めれば同じとは言える。 しかし、主人公の性格が斜に構えすぎで周りを見下してい…

「折木」と「伊原」

米澤穂信先生の<古典部>シリーズでは、主要登場人物である古典部メンバー4人の互いの呼び名は、皆が皆ちがっていてそれぞれの個性や距離感を表す面白い小道具になっています。*1 その中で誰と誰との間が一番遠いかと言えば、これは互いを名字の呼び捨てで…

「わたしのリミット」松尾由美・著

松尾由美の物語「わたしのリミット」の感想と考察各種(長文)

「本と鍵の季節」米澤穂信・著

高校生男子の図書委員二人が、駄弁りながら友情と推理を深めていく連作短編集です。舞台がら、本と図書室・図書館がネタになった編も多めです。 割と常識的で善人、顔も体格も(ついでに名前も)平凡な堀川次郎(語り手)と、普通の学生から一歩踏み出したニ…

「おまえさま」で「あにさま」

自分の書いているシリーズ「竜王のひ孫と」の設定でそうしたものだから、義兄妹で結婚して、という設定がちょっと気にかかっている。 特に、呼び名がどうかわるものか、という点がである。そういえば、藤沢周平先生の「たそがれ清兵衛」、相いたわる仲の良い…

シレネッタって、なに?

シレネッタってなんだろう?