遠藤律子と松尾由美

 松尾由美先生の二つの作品、「おせっかい(幻冬舎単行本 2000/6)」と「ブラック・エンジェル(創元推理文庫 2002/5)」の表紙は共に、遠藤律子という方が描かれた、内容とは直接関係のなさそうで、しかもお互いよく似た、ヒエロニムス・ボス風のシュールレアリスムな風景画となっています(ただし絵の中に描かれたひとの数は少ない)。

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「おせっかい」の表紙

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「ブラック・エンジェル」の表紙

 この方、イラストレーターとしては聞かない名前ですが、検索してみる限りは、1997年に国立宮城工業高等専門学校に所属して「パッケージとしてのブックカバー・イラストレーションの試作」という論文を執筆された方らしいです。というのも、この論文の中にある、A・カミュ選書(おそらく架空)の「異邦人」の表紙やパッケージのモチーフやタッチがこれらとそっくりだからです。

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論文の資料画像

 この二冊、本としてみたら、内容も出版社も全く異なり、どうしてこうなったのかがよく分からないです。内容と全然つながらない表紙はたまにありますが、この二冊の場合は、それはそれで雰囲気としていいのではと思っているので、経緯にだけ不思議さを感じています。
 時間の流れからは、論文に編集者さんか作家さんが注目して、本の表紙の依頼を次々した、はずなのですが。

 

 なお、ジャズピアニストの遠藤律子さんとは別人です。