「わたしなら、そんな回りくどい事しませんね♪」
ロンワンの、へらへらした笑顔・無責任なほど飄々とした物言いに、なぜかいつも納得させられるリュオであった。理屈立てて考えれば、はっきり言って信用できない相手である。何しろ、相当手間がかかるであろう異世界への旅の扉を作っておいて(押してダメなら引いてみな、と言うことさ、と本人は語っているが)、ただ退屈しのぎに自分へちょっかいかけるだけにしか使っていない輩(やから)なのだ。
しかし、その時のリュオはその言葉を信じてしまった。ロンワンの言葉にはいつも説得力がある。催眠の呪文ラリホーや混乱の呪文メダパニのような、こころに影響を与える力がロンワンの言葉にはあるのかもしれない。ロンワンに言わせれば、ロンワンとリュオが「異世界同位体」である影響のひとつ、ということだが、ならなぜ自分のほうが一方的に操られる側である(ように思える)のか、どうにも納得がいかない話であった。
「では、ハ、ハーゴンの呪いというならどうすればいいのじゃ?」
リュオの真摯な問いに対する、ロンワンの答えというのが人を食ったものだった。
「ほっといたら? そのうち治りますよ」
「なんじゃとーー!」
ロンワンが、ちっちっと立てた一本指を振った。
「われわれ竜には高い抵抗力があるんですよ? 人間なら完全に動物化していたところなんですから」
確かにムーンブルクのムラサキ王女は、同じような呪いで完全に犬の姿になってしまったという。しかし……
「もっと、何とかする方法はないのじゃろうか?」
「術師のハーゴンを倒せば自然と呪いは消えますよ?」
「それはそうじゃろうが、いつまで待てばいいのじゃ。もっといい方法は……」
「ふむ、聖なるもので呪いを祓っては?」
「それじゃ!」
さっそく聖水を取りに行こうとしたリュオの背後で、ロンワンが独り言のようにつぶやいた。
「これは、世界樹から滴るしずくとかでないと解けない威力じゃないかな~」
「そのようなもの、いかようにして手に入れればいいのじゃ!」
「ロトの子孫たちに取りに行ってもらえば?」
「紋章探しだけでもあちこち行ってもらって大層させておるのに、このような私事ごときで頼めないのじゃ!」
「ふむむ~」
ロンワンが腕組みをして考え込む。
「ロンワン殿、そのような振りをしておるが、実は何かいい手があるのじゃろ?」
突っ込まれて、ロンワンはあっさりと顔を上げるとニカッと笑った。
「バレました? ではリュオさん、お耳を拝借」
ここには二人しかいないのになんじゃ。そう思いつつリュオはロンワンに近づいた。そのリュオの頭上の三角の耳に、ロンワンは解法をささやいた。
「ええ~、そ、それは……」
ロンワンの、へらへらした笑顔・無責任なほど飄々とした物言いに、なぜかいつも納得させられるリュオであった。理屈立てて考えれば、はっきり言って信用できない相手である。何しろ、相当手間がかかるであろう異世界への旅の扉を作っておいて(押してダメなら引いてみな、と言うことさ、と本人は語っているが)、ただ退屈しのぎに自分へちょっかいかけるだけにしか使っていない輩(やから)なのだ。
しかし、その時のリュオはその言葉を信じてしまった。ロンワンの言葉にはいつも説得力がある。催眠の呪文ラリホーや混乱の呪文メダパニのような、こころに影響を与える力がロンワンの言葉にはあるのかもしれない。ロンワンに言わせれば、ロンワンとリュオが「異世界同位体」である影響のひとつ、ということだが、ならなぜ自分のほうが一方的に操られる側である(ように思える)のか、どうにも納得がいかない話であった。
「では、ハ、ハーゴンの呪いというならどうすればいいのじゃ?」
リュオの真摯な問いに対する、ロンワンの答えというのが人を食ったものだった。
「ほっといたら? そのうち治りますよ」
「なんじゃとーー!」
ロンワンが、ちっちっと立てた一本指を振った。
「われわれ竜には高い抵抗力があるんですよ? 人間なら完全に動物化していたところなんですから」
確かにムーンブルクのムラサキ王女は、同じような呪いで完全に犬の姿になってしまったという。しかし……
「もっと、何とかする方法はないのじゃろうか?」
「術師のハーゴンを倒せば自然と呪いは消えますよ?」
「それはそうじゃろうが、いつまで待てばいいのじゃ。もっといい方法は……」
「ふむ、聖なるもので呪いを祓っては?」
「それじゃ!」
さっそく聖水を取りに行こうとしたリュオの背後で、ロンワンが独り言のようにつぶやいた。
「これは、世界樹から滴るしずくとかでないと解けない威力じゃないかな~」
「そのようなもの、いかようにして手に入れればいいのじゃ!」
「ロトの子孫たちに取りに行ってもらえば?」
「紋章探しだけでもあちこち行ってもらって大層させておるのに、このような私事ごときで頼めないのじゃ!」
「ふむむ~」
ロンワンが腕組みをして考え込む。
「ロンワン殿、そのような振りをしておるが、実は何かいい手があるのじゃろ?」
突っ込まれて、ロンワンはあっさりと顔を上げるとニカッと笑った。
「バレました? ではリュオさん、お耳を拝借」
ここには二人しかいないのになんじゃ。そう思いつつリュオはロンワンに近づいた。そのリュオの頭上の三角の耳に、ロンワンは解法をささやいた。
「ええ~、そ、それは……」
「リュオさん、それで、竜王様が言われた解法とは?」
サスケの促しに、リュオは巡る血がカッと熱くなるのを感じた。
「いや、いいのじゃ。こんな呪い、すぐに治るのじゃ」
「そんなわけにはいきませんよ。教会に連れて行って差し上げましょうか? そうだ、ラダトームには呪いの解き方を研究している賢者がいらっしゃった。会いに行きませんか? きっと解く方法を教えてもらえますよ」
「いや、いいのじゃ! ほっといても大丈夫なのじゃ!」
(言えぬ、とても言えぬ……)
リュオはあの時のやり取りの続きを思い返した。
サスケの促しに、リュオは巡る血がカッと熱くなるのを感じた。
「いや、いいのじゃ。こんな呪い、すぐに治るのじゃ」
「そんなわけにはいきませんよ。教会に連れて行って差し上げましょうか? そうだ、ラダトームには呪いの解き方を研究している賢者がいらっしゃった。会いに行きませんか? きっと解く方法を教えてもらえますよ」
「いや、いいのじゃ! ほっといても大丈夫なのじゃ!」
(言えぬ、とても言えぬ……)
リュオはあの時のやり取りの続きを思い返した。
「呪われたお姫さまの呪いを解くのは、王子さまのキスと決まっていますよ」
その言葉を聞いたリュオの頭はカッカッと熱くなり、ロンワンが腕を取って支えなければ倒れるところであった。
「……だ、だれがお姫さまじゃ!
いや、それはともかく、じょうだん、じゃろ?!」
「いやいやいや」ロンワンは人を小馬鹿にするような笑いを浮かべた。「王族……特に勇者の血筋を引くような王族には、神聖な癒しの力があるものなんですよ?」
「それならムラサキ殿はどうなるのじゃ?」
「どんなテコだって、それ自体を持ち上げることはできませんよ?」
その言葉を聞いたリュオの頭はカッカッと熱くなり、ロンワンが腕を取って支えなければ倒れるところであった。
「……だ、だれがお姫さまじゃ!
いや、それはともかく、じょうだん、じゃろ?!」
「いやいやいや」ロンワンは人を小馬鹿にするような笑いを浮かべた。「王族……特に勇者の血筋を引くような王族には、神聖な癒しの力があるものなんですよ?」
「それならムラサキ殿はどうなるのじゃ?」
「どんなテコだって、それ自体を持ち上げることはできませんよ?」