四訪竜王城(その1)

 最後の冒険への準備を整えて、(旧)竜王城を訪れてみると、そこは果物の焼けた、甘い匂いに包まれていた。
 ジュルッ、と音を立ててツバを飲み込んだ者がいた。もちろんローレシアのロウガ王子である。
 「コラ! 何やってるの!」
 ムーンブルクのムラサキにポカリとやられて、ロウガは唇を尖らせて言い返した。防御力の高いロトの兜をかぶっていても、叩かれればそれなりに痛い。しかもムラサキのツッコミには容赦というものが無いのだ。
 「ウマそうなにおいしてんだからしかたないじゃん? つうか、なんでムラサキはツバ飲み込まないんだよ?」
 「あたしはサスケに言われてちゃんと食事とったからね」
 「オレだってたっぷり食べたよ!」
 「あんたは食べすぎなのよ!! あんだけ食べても食べ足りないっていうの?!」
 「やあ、リュオさん」
 火花を散らしあう二人の後ろから、一行のもう一人、サマルトリアのサスケは声を上げた。ロウガとムラサキがあわてて前を向くと、紫の長衣に竜頭のついた杖の竜王装束に身を包んだ、竜王のひ孫リュオが立っていた。いつにも増してしずしずと現れたので二人は気づかなかったのだ。そういえば、今回は顔を覆う布が妙に厚い。
 「……お、遅かったのじゃな。べ、別に待ってはおらなんだが。菓子が焼け過ぎてしまったではないか!」
 「もうできてるの? 食べる食べる!」
 親からの餌を待つ雛鳥のように首を乗り出すロウガを、年長の二人が押えた。
 「まずは、必要なことを行ってからです」
 「そうよ、ロウガ」
 「うむうむ、サスケ殿の言われるとおりじゃな」
 「え~、お腹すいたすいた! 耐えられないよー!」
 ロウガの抗議を無視して、サスケはリュオに向き直った。
 「リュオさん、紋章は全て揃えてきました。これで、大丈夫ですね?」
 「うむ、任せておくのじゃ。精霊ルビスを呼び出してみせようぞ」

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