岡本綺堂「中国怪奇小説集」備忘

 岡本綺堂先生が選んだ中国怪談傑作集から、興味深かったところの覚え書き。

虎の難産

 産婆が(化生でない)虎のお産に連れていかれて、お礼もあった話。

天使

 三国志麋竺の家に、火災をもたらす天の使いがやってくる話。

白帯の人

 黄衣白帯の化生が、黄帯ではなく白帯の自分を助けてくれと依頼する話。そのあと黄色い大蛇と白い大蛇が現れ戦い始めるが……。ややこしい服装だな。
 実は黄色い大蛇の方が依頼者……て、ことはないか。

烏龍

 題名は忠犬の名前。怪物としては「烏龍」というのは存在しないというが。

蛟を生む

 川の流れに感じて三匹の蛟を生む話。あざなは大きい順に「当洪」「破阻」「撲岸」。つまりは洪水の化身か。大水の日に川に帰った。

七聖画

 正体は鴿はとの七人兄弟が見事な絵を描くが、作業の際のあまりの静けさに押し入った人々に作業を中断されて未完成になってしまう話。祟りはない。

陳巌の妻

 化生の登場する話。サルの化生の方は名字が「侯」、獣偏にしたら「猴」で漢字が通ずるのはわかる。黒犬の方は「盧」、どうしてこの字かと思ったら、この字は「黒い良犬」の名に用いられるとか。

李生の罪

 二十七年前の殺人事件の被害者の生まれ変わりに(理不尽にも)殺される話だが、被害者は三十七歳。誤植?

鬼国

 常人が(中国の)「鬼」扱いされる怪しい島の話。倉橋由美子「オーグル国渡航記」の元ネタか。

雨夜の怪

 上が平らで脚がたくさんある怪物に勘違いされる笑話。

両面銭

 狄青将軍が、銭の表裏で占う吉凶占いの際、こっそり両面とも表のインチキな銭を作っておいて景気づけした話。「紅い面が出た」とあることからすると、表裏で違う色を塗った占い用の硬貨があったということか? 厭勝銭のたぐい?