景気づけ占い

 ひとつ前の、岡本綺堂「中国怪奇小説集」備忘という記事で、両面とも表の硬貨を用いた占いのイカサマに触れた。
 こういうインチキ、というか端からいい目しかでないようになっている、景気づけの占いというと、思い出すのが「魁!! 男塾」に登場したものである。

 一つは、100ある目のうち99までが「勝利」、残りの一つだけに「死」と書かれたルーレット、もう一つは六つの面に全て縁起の良い文字の書かれたサイコロである。前者はほとんど、後者は絶対悪い目が出ないようになっており、出陣前の景気づけに持ち出されたものであるが……ありえないことに二度とも不吉な目がでることになってしまう。男塾の戦いが苦戦苦闘の連続だと思うと、まさしく当たっているわけであるが。

 ここで冒頭の銭貨占いに戻る。狄青将軍は、なんと百枚を一度に投げ、勝利ならばすべて表になれと確率的にまずありえない願いを述べたのだが、結果はすべて表で軍勢は大いに士気を高めた。実はひそかに両面とも表の銭を用いていたのだ――というのが故事である。

 男塾ならば、100枚とも表? ありえない! と塾生たちが叫ぶ中で、鬼ヒゲ教官が心配するなと両面とも表であることを示して占いに入る、そこまでは想像できる。問題はそこからいかに不吉な目を出すか? というところ。突風か何かが突っ込んでくるかして銭が跳ね飛ばされ壊れてしまうか、誰かに踏みつけられ「裏」と烙印されてしまうか、どうもサイコロの時の二番煎じしか思いつかない。