「おまえさま」で「あにさま」

 自分の書いているシリーズ「竜王のひ孫と」の設定でそうしたものだから、義兄妹で結婚して、という設定がちょっと気にかかっている。
 特に、呼び名がどうかわるものか、という点がである。そういえば、藤沢周平先生の「たそがれ清兵衛」、相いたわる仲の良い武士夫婦の話だけど、あれはみなしごが親戚に引き取られて、成り行き上(おそらく嫁入りさせる都合がつかなかったのだろう)義兄と夫婦になってそのまま養われているという設定だった。短編で短く説明するためとは言えロマンティックである。あれは「おまえさま」と夫(義兄)をよんでいるけど、結婚前の幼いころはあの作家の言葉遣いからして「あにさま」とよんでいたのだろうか?

 三十歳ぐらいになっているはずなのに夫に頼り切って、却って病を重くしているのではないかとされる妻。「たそがれ~」という悪評にかまわず妻の介護に努め、討手という危険な役を引き受けたのも妻の療養に援助がもらえるから、という夫。子供もなく、二人っきりというのは、仲が良くていいの一言ではすまされない気がする。エピローグで妻を療養に送ってしばらくそれぞれ一人で暮らしたのは、そういう意味でもいいことなのではないだろうか、と再読して思った。