松尾由美先生の小説「安楽椅子探偵アーチー(2003)」を読んでいたら、月刊「推理世界」なる雑誌が登場してきた。主人公の友人であるミステリマニアな少女の愛読書である。
ここで思い出したのが、北村薫先生の「覆面作家」シリーズ(1991~)で、視点人物の編集者が勤めていて、探偵役の推理作家が初投稿した雑誌が「推理世界」だったことである(「世界社」発行で、ナニナニ世界という名の姉妹誌が複数ある)。この名前は「毎朝新聞」や「城北大学」のような、いかにもありげな架空の名称、の一つなのだろうか?
ググってみたら、中町信先生の「天啓の殺意」(「散歩する死者(1982)」を改稿)にも登場していて、そこでは「春光出版社」発行であった。他にも例があるのだろうか?(中国には実在するそうだ)
ところで、「アーチー」は東京創元社の雑誌「ミステリーズ!」(ただし隔月刊)に掲載されていたので、その名前自体か、あるいはそれをもじったものを使おうとは思わなかったのだろうか? 登場したのが新人賞を題材としてだったから、読者が実在の方と勘違いしないように、という配慮だろうか?
他の例
- 松尾由美「バルーン・タウンシリーズ」:月刊推理世界
探偵役である翻訳家の得意先。松尾先生の最初のシリーズ、「アーチー」より先行している。松尾先生は人名を使いまわす傾向があるが、固有名詞の例は珍しい。 - 〃「おせっかい(2000)」:推理世界
月刊誌。重要な舞台となる、作中の方の小説「おせっかい」が連載されている。