「ニャン氏」シリーズに足りないもの

 松尾由美先生の「ニャン氏」シリーズ第二弾「ニャン氏の童心」には、主人公の女性編集者・田宮宴と第一弾のレギュラー登場人物で運送ドライバーの岡崎が共演する話があります。この二人、割れ鍋に綴じ蓋で意外とお似合いではないかと思うのです。

 なぜそんなことを考えたかといえば、まずそもそもニャン氏シリーズに物足りないものがあるとすれば、男女の幸せな、あるいはほのぼのとした色恋話だと感じたからです(第一弾の佐多君や第三弾の茶谷君の過去の失恋話はあるけれど)。松尾由美先生、決してそういうのが不得意なわけではないです。同じユーモア・ミステリーである「ハートブレイク・レストラン」シリーズや「安楽探偵椅子アーチー」シリーズにはふんだんにあるのです。勘ぐれば、人間ドラマをニャン氏主従と各巻の主人公との出会いと別れに絞ろう、という狙いなのかもしれないです。*1が、それでは少し寂しいと感じるのです。

 そこで、どういうカップルが考えられるか? 学生メイドの来栖さんと佐多君という線もないではないですが、宴・岡崎組の方が面白い、相性がよさそうということで。宴は岡崎を親切だとか話の整理がうまいとかまあ好意的に見ているし、事件に対する興味も、明け透けな岡崎にちょっと引くところはあるものの方向性は同じ。岡崎は岡崎で女性へのストライクゾーンは広そうであるので、うまく転がっても面白かったのではと思うのです。小椋さんと山田店長みたいに。

 

 

 

*1:色恋話に出会ったら、ハルさんなら控えめながら応援するだろうし、アーチーなら(生)暖かい目で見守ると思うのですが、ニャン氏主従だと、人間の男女ってめんどくさいで済ますところがストーリーの傾向にも関わっている気がします。暮林女史がどうなのかは、私はよく分からないです。