宿敵・大神官ハーゴンへの手がかりを求めて、古都ラダトームを訪れたロトの勇者たち三人。そこで、勇者の一人・サマルトリアのサスケは気掛かりな噂を耳にしたのだった。
「竜王だってー!」
サスケがその噂のことを紹介した途端、まるで戦闘に臨む時のような勢いで乗り出してきたのは、同じくロトの勇者の一人・ローレシアのロウガだった。
「そう、竜王です」
サスケの確認を得て、ロウガは「面白いっ!」と一言吼えると、買ったばかりでお気に入りの大金槌を握り締めて宿屋を飛び出していった。素振りでもするつもりらしい。
「はー、ロウガも血の気の多い」
サスケは呆れて一言漏らした。
「それで、本当なの?」
今まで黙っていた(と、いうかロウガが先走ったため口を挟む暇がなかった)三人目が口を開いた。やはりロトの勇者の一人で紅一点・ムーンブルクのムラサキである。
ここで話題になっている竜王とは、彼らの曽々祖父が倒した魔王であった。その話は、有名な伝説ともなっている。もし竜王が本当に復活したとすれば、その報せが、この地アレフガルドとの間に海があろうが彼ら三人それぞれの故国にも伝わらないはずがなかった。
「どうですかねぇ? 竜王の城が魔物の巣窟になっているのは、宝探しに行った人間がいるから確かですが、竜王がいるかどうかは疑問ですね。はっきりと姿をみた人はいないようですし」
「でも……」ムラサキが紅い唇を開いた。「ただのドラゴンを見間違えたにしろ、それはちょっとした怪物よ。退治しておくだけはあるんじゃないかしら。
そうすれば、ラダトームの王様の心も安らいで、またお出ましされるようになるかもしれないわ」
サスケは、杖を握り締めるムラサキの手に力が篭るのに気づいた。なんだかんだ理由付けはしていても、この親戚も、いま外で鍛錬している親戚と同じで、強敵と戦うのが好きらしい。
「そうですね、明日は竜王の島へ行ってみましょうか」
サスケの決定に、ムラサキは深くうなずいた。
2007/8/11追記
「メモ・Ⅱの三人 」- 竜王五代
上記とは早速名前が変わっています。ムーンブルクはムクゲという名前も考えたのですが、花の槿はともかく、むく毛というのはハマりすぎということで。