竜王のひ孫と(その一・ラダトーム)

 DQ2の二次創作である「竜王のひ孫と」シリーズの一番始めです。

 


 

 宿敵・大神官ハーゴンへの手がかりを求めて、いよいよ港町ルプガナより大海に乗り出し、古都ラダトームを訪れたロトの勇者たち三人。そこで、勇者の一人・サマルトリアのサスケは気掛かりな噂を耳にしたのだった。

 

 「竜王だってー!」
 サスケがその噂のことを紹介した途端、まるで戦闘に臨む時のような勢いで乗り出してきた少年が、同じくロトの勇者の一人・ローレシアのロウガだった。

 短く刈った黒く硬い髪に目も口も大きいざっくばらんな顔立ち、引き締まったからだは肉食のけものを思わせるが、中でも野生のけものではなく人なれした狩り犬の感があるのは、どこか漂う育ちの良さのためだろう。
「そう、竜王です。竜王の城に再びいるというんです」

 それに答えた青年の方が、サマルトリアのサスケ、日に焼けて藁の色になった金髪とすらりとした長身に、人当たりのよさそうな雰囲気を漂わせている。
 サスケの確認を得て、ロウガは「面白いっ!」と一言吼えると、一日じゅうの聞き込みの疲れも見せず、買ったばかりでお気に入りの大金槌、武骨な鉄の塊のそれを無造作に握り締めて宿屋を飛び出していった。素振りでもするつもりらしい。
「はー、ロウガも血の気の多い」
 サスケは呆れて一言漏らした。
「それで、本当なの?」
 今まで黙っていた(と、いうかロウガが先走ったため口を挟む暇がなかった)三人目が口を開いた。やはりロトの勇者の一人で紅一点・ムーンブルクのムラサキ、赤紫色の頭巾から零れる青がかった紫色の髪と理知的なあやめ色の目をした、細身でずいぶんと背の高い若い娘である。
 ここで話題になっている竜王とは、彼らの高祖父が倒した魔王であった。倒すまでの話は、有名な伝説ともなっている。もし竜王が本当に復活したとすれば、その報せが、この地アレフガルドとの間に海があろうが彼ら三人それぞれの故国にも伝わらないはずがなかった。
「どうですかねぇ? 竜王の城が魔物の巣窟になっているのは、宝探しに行った人間がいるから確かですが、竜王がいるかどうかは疑問ですね。気配を感じたとか、奥に入ろうとしたら拒む声を聞いたとかで、はっきりと姿をみた人はいないようですし」
「でも……」ムラサキが紅い唇を開いた。「ただのドラゴンを見間違えたにしろ、それはちょっとした怪物よ。退治しておくだけはあるんじゃないかしら。
 そうすれば、ラダトームの王様の心も安らいで、またお出ましされるようになるかもしれないわ」
 サスケは、杖を握り締めるムラサキの手に力が篭るのに気づいた。なんだかんだ理由付けはしていても、この親戚も、いま外で鍛錬している親戚と同じで、強敵と戦うのが好きらしい。
「そうですね、明日は竜王の島へ行ってみましょうか」
 サスケの決定に、ムラサキはこくりとうなずいた。

 


 

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2007/8/11追記

「メモ・Ⅱの三人 」- 竜王五代
 上記とは早速名前が変わっています。ムーンブルクムクゲという名前も考えたのですが、花の槿はともかく、むく毛というのはハマりすぎということで。

2020/5追記

 キャラクター描写の強化を中心に改稿を行う。旧版