竜王のひ孫と(その二・竜王の城廃墟)

 ラダトームを出港して竜王の島に着くまで、わずかしかかからなかった。
「なあ、なんでご先祖様もこうしなかったのかな?」
 舳先に立って行く手にある竜王の島に目を輝かせていたロウガがひょいと口にした一言に、流石のサスケも憮然として答えた。
竜王の出現と共に、アレフガルド内海は激流渦巻く荒海に変わってしまったんですよ。それまではラダトームは交易の中心地だったんですが、それがきっかけとなって、没落が始まったんです」
「そうなのか。サスケは物知りだな」
「じゃあ」ムラサキが口を挟んだ。「この海がこんなに穏やかだということは、やはり竜王はいないということなのかしら?」

 竜王の城の沖合いに船を停泊させると、ロトの勇者たちは端艇で上陸した。
 かつての竜王の城は、すっかり廃墟となっていた。潮風にさらされて、石張りの床こそ残っているものの、同じく石で造られていただろう建物は崩れ去って柱や壁の残骸がいくらか残っているだけだった。
「やっぱり、噂だけなのかしら?」ムラサキが呟いた。
「いや、どうですかね? 少々さっぱりし過ぎている気がします」サスケの鋭い目は、この遺跡から何かを捉えたようだった。
「おーいっ」二人のところへ、ロウガの叫びが聞こえた。「こっちに階段があるぞーっ」
 サスケとムラサキはロウガの元へ向かった。確かに、一箇所だけ残った屋根の下に地下へと続く階段があった。
「よし、行ってみましょう」
「おうっ」
「ええ」
 サスケの言葉に、ロウガとムラサキは力強くうなずいた。


その三へ