表紙に描かれてある一匹の竜、後ろ脚で堂々と立ち、赤く燃える炎を吐いている青い鱗の竜は、リュオの敬愛するリュオの曾祖父・竜王であった。
書物の名は「竜王盛衰記」、数ある、竜王の出現からロトの血を引く勇者に倒されてしまうまでを描いた歴史物語の一つに違いなかった。
どういうわけかリュオの亡き父は好んでこの手の書物を蒐集していたが、リュオはどうにも好きではなかった。
当然である。リュオだって竜王が怪物を放ち天変地異を起こし世界中の人々を虐げたことぐらい知っている。知ってはいるが、自ら書物を読んで改めて知りたいとは思わない。それよりも、父が語ってくれたような、秘儀の達人であり、多くの猛者を従えていた統領であるところの竜王の印象を大事にしたかった。
とはいえ、その父も亡くなって随分となる。これも何かの縁、久々に竜王にまつわる話を思い返したくなったリュオは、この「竜王盛衰記」を読んでみることとした。
書物の名は「竜王盛衰記」、数ある、竜王の出現からロトの血を引く勇者に倒されてしまうまでを描いた歴史物語の一つに違いなかった。
どういうわけかリュオの亡き父は好んでこの手の書物を蒐集していたが、リュオはどうにも好きではなかった。
当然である。リュオだって竜王が怪物を放ち天変地異を起こし世界中の人々を虐げたことぐらい知っている。知ってはいるが、自ら書物を読んで改めて知りたいとは思わない。それよりも、父が語ってくれたような、秘儀の達人であり、多くの猛者を従えていた統領であるところの竜王の印象を大事にしたかった。
とはいえ、その父も亡くなって随分となる。これも何かの縁、久々に竜王にまつわる話を思い返したくなったリュオは、この「竜王盛衰記」を読んでみることとした。
意外なことに、この本はなかなか面白かった。民衆の苦しみについてはあっさりと流し、竜王及びその配下と勇者の武勇伝が中心となっていたからであった。
その中でも、一つのエピソードがリュオの興味を引いた。アレフガルド王国の姫・ローラと、彼女が勇者に渡したという護符の話である。この護符があると、勇者は姫が帰りを待つラダトームの城への方角や距離がわかっただけでなく、姫は遠く離れた勇者に激励の言葉を送ることもできたという。その護符は姫にちなんで「王女の愛」と呼ばれたとあった。
「むむむ……」リュオは本を広げて唸った。
儂も、贈りたい。
恩義を受けた人を冒険に送り出しておいて、自分は待つしかない、ローラ姫の気持ちが今のリュオにはよくわかった。せめて言葉なりとも届けたい。それに自分の知識が役に立つこともあろう。
さて、作り方は……人であるローラ姫が作れたものを、竜王の子孫である儂が作れないはずがないのじゃ。リュオは「竜王盛衰記」をもう一度最初から一字一句読み返したが、著者は知らなかったのか何も触れられていず、ただリュオを落胆させただけであった。
その中でも、一つのエピソードがリュオの興味を引いた。アレフガルド王国の姫・ローラと、彼女が勇者に渡したという護符の話である。この護符があると、勇者は姫が帰りを待つラダトームの城への方角や距離がわかっただけでなく、姫は遠く離れた勇者に激励の言葉を送ることもできたという。その護符は姫にちなんで「王女の愛」と呼ばれたとあった。
「むむむ……」リュオは本を広げて唸った。
儂も、贈りたい。
恩義を受けた人を冒険に送り出しておいて、自分は待つしかない、ローラ姫の気持ちが今のリュオにはよくわかった。せめて言葉なりとも届けたい。それに自分の知識が役に立つこともあろう。
さて、作り方は……人であるローラ姫が作れたものを、竜王の子孫である儂が作れないはずがないのじゃ。リュオは「竜王盛衰記」をもう一度最初から一字一句読み返したが、著者は知らなかったのか何も触れられていず、ただリュオを落胆させただけであった。
ちょっと後書き
リュオと子孫たちが離れてても話できるようになったら、ストーリーが別物になってしまうので会話機能がついたものは登場させるつもりはないです。ふと思いついたのですが、あれ、別にローラ姫が作ったんじゃなくてラダトーム王家に伝えられていたのを渡しただけという可能性も十分にありますね。今さらながら。