「ひ孫の愛」

「王女の愛」http://blogs.yahoo.co.jp/ryuougodai/61808172.htmlの続き、もしリュオが「王女の愛」を作るのに成功していたら、という話です。

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 竜王の宮殿を訪れたロトの子孫たち三人は、互いの顔を見合わせた。
 この宮殿の現在のあるじ・竜王のひ孫リュオが、彼らが曾祖父竜王の仇の子孫であることを忘れたかのように歓迎してくれるのは毎回のことであるが、今回はいつもにも増して上機嫌で迎えたからであった。これまでのことを談話する間も、リュオの小ぶりな顔からはニコニコと笑いがあふれ出ていて、ムーンブルクのムラサキが声を押えてサマルトリアのサスケに「あれ、悪いものでも食べたんじゃない?」と耳打ちするくらいであった。
 話もひと段落ついて、サスケがリュオに尋ねた。
「それでは、そろそろ次の紋章のありかを教えてくれませんか?」
「うむ、調べておいたのじゃ。次は、南東の方角、ムーンブルクを超えた海の向こうじゃ!」
 自信満々なわりにはいい加減な答えに、ローレシアのロウガはともかく、サスケとムラサキの二人は少しがっかりしたような表情を浮かべた。しかしリュオは彼らのそんな表情を予想していたかのように、金属の板を組み合わせた円盤を取り出すとサスケに手渡した。
 「これは?」
 サスケはその円盤を胸の前まで差し上げて尋ねた。
 「まあ、すぐにわかるのじゃ」
 リュオは、今度は渡したのと対になるような少し小ぶりな円盤を取り出すと、なにかをつぶやいた
 「「サスケ殿」」
 「?!」
 まるでリュオが二人に増えたかのように、二か所から同じ声がして、サスケはあやうく円盤を取り落としそうになった。
 「「どうじゃ、わかったじゃろ?」」
 前に立つリュオ、そして手にした円盤、その両方から、リュオの豊かな響きのある声が二重唱になって放たれていた。
 「もしや……」
 「「わかるじゃろ?」」
 リュオはくいくいっと自分の目を指さした。サスケはリュオの後ろに回ると、取り出したハンカチでリュオに目隠しをする。ロウガは、その様子を目を輝かせて見ている。

 「「んーーーん」」
 リュオの声が小さく響く。
 「「そこじゃ! 玉座のうしろ2歩じゃろ、サスケ殿!」」
 「すげえなぁ、場所まで分かるのかよ」
 玉座の後ろから円盤を手にして現れたのは、ロウガであった。
 「え?」
 リュオが目隠しをとると、サスケは先ほど彼女に目隠しをしたのとほぼ同じ位置、リュオの隣にいた。
 「済みません、ロウガに取られてしまいまして」
 「なによ、その顔は?」
 黙って実演を見守っていたムラサキは、リュオが一瞬浮かべただけの愕然とした表情も見逃してはいなかった。
 「この道具、あたしたち三人に呉れるんじゃないの? これで遠く離れても、細かく位置を知らせてくれるってわけでしょ? 近くに紋章があると、紋章の場所を調べるあんたに支障があるようだしね」
 「むむむ……その通りじゃ」
 不精不精に認めるリュオに、サスケが笑いかける。
 「ああ、ロウガに渡しておいて落とさせたりしたら大変ですから、旅の間は私が預かりますよ。いいものをありがとうございます」
 この言葉に赤らんだリュオの顔が、ムラサキに耳打ちされてこれ以上なく真っ赤になった。
 「知ってるわよ、これ。『王女の愛』でしょ?」

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 リュオが作った「王女の愛(もどき)」は、多分、理屈としては紋章の場所が山彦の笛でわかるのと同じく、共鳴を利用しているものと思われます。