「反逆者の月3」

 以前、感想を書いた「反逆者の月」の続き、時代は原題の"Heirs of Empire"、訳して「帝国の後継者(※)」のとおり第二世代に移っております。とはいえ寿命が600年にもなるサイボーグ技術が標準なこの世界、今までの主人公である親世代も現役まっさかり、というか現役はじまったばっかりで、第二世代の中心人物である皇太子ショーンがいつまでも皇太子という宙ぶらりんでいいのだろうか、と親たちから懸念されているとおり、長生き出来過ぎるのも考えもののようです。ここは同じく長命人種たちの宇宙帝国であるアーヴ帝国に倣って、適当なところでコリン皇帝には引退してもらうのがいいんじゃないかと思わなくもなく。
 脱線が過ぎました。話は暗殺されるところをなんとか助かったもののはるか遠くの異星域に飛ばされ、帰還しようと奮闘する子供たちと、子供たちの復讐に燃え陰謀を暴こうとする元気一杯の親たちの二本筋からなっております。
 とはいえ子供たちは心配性な宇宙戦艦ダハクのおかげで亜光速宇宙船を一隻得ており、生き延びる苦労は全然ありません。問題は帝国本土から遠すぎることで、通信手段を求めて旧帝国の遺産を探すこととなります。それが割とすぐ(といっても漂流2年ぐらい)の星系で見つかった……見つかったものはいいものの、それは現地の前近代レベルの惑星上の帝国の首都にあり、なんだかんだでそこまで現地人を率いて攻めのぼっていくこととなります。

 と、いうわけで、今回は超兵器陸空戦や宇宙艦隊戦といった派手な一・二作目とは色合いの異なる話で、子供たちと時代の流れの紹介めいた感じがありありです。ダハクもせっかく登場したスーパー犬もあんまり活躍しないし、ここは最後の敵・アチュルタニのコンピュータ頭脳との決戦を描いた第四部を期待します。考えるに最盛期の第四帝国の艦隊ならアチュルタニに楽勝っぽい感じなので、アチュルタニ側にもわざと性能をおとしてない本気の艦隊を出してもらって。

 あと、やっぱり、尺足りないですよ。戦争起こしてしまった惑星とか、皇女ハリーと神父な人とか、きっちり大団円で書いてほしい。二本の筋のまとめは弱くなるし。やっぱりめでたしめでたしの部分が読みたいんですよ、私は。

 脱線。無改造なアチュルタニの寿命が50年って、数世紀がかりで遠征という鈍足で気の長いのをどうやってこなしたんだろう? クローン設備を艦隊にもたすと、本星の対抗勢力が育ちかねないし、大半がステイシス(停滞)状態にとどめ置かれていたのかしら?

※「帝国の後継者」という仮題は、↓「老眼palm」内の「反逆者の月2」の記事から拝借しました。
http://roganpalm.com/20080323/1236-35/