「聖結晶アルバトロス」――姫様かわいい

 近頃はまった……とまでは言えないマンガ、全5巻打ち切り。
 異能の力を得た少年主人公が、その力を与えたヒロインとともに戦って道を切り開いていく、というパターンの物語である。しかし、その「戦い」というのが狭い意味の「戦闘」中心になっていて、そこが上手くなかったんじゃないかなぁ、もっと世界設定を見せていく探検とか冒険中心にしてキャラクター同士の掛け合いを描いていったら良かったんじゃないかなぁ、と思わないでもなく。まぁ、それだけヒロインの「姫様」が私の好みにあっていた、というわけである。

 さて、この「姫様」アルバトロス(つまりはタイトル名がヒロイン名なわけで)、優れたところと言えば容姿と、人一人抱えて飛べることぐらい、ドジって窮地に陥ることもしばしばで、実にへっぽこである。おまけに、平時はエネルギー節約のため女子中学生を装っているのだが、行動も思考も実にトロくなり身なりも汚れてて、ついたあだ名が「ゴミ子」という、ダメっ子なのである。
 だからこそ、けなげにがんばるところが映える。また、彼女は物語の発端となった大災害を引き起こした張本人として、またその道が険しいことがわかっているからこそ、主人公を巻き込みたくないと、しばしば自分一人で行動すると言い張るのだが、いつも結局あまりにお節介な主人公に押し負けて、だんだんと好意を抱くにいたるところが、実に犬的ツンデレ(好意は自覚しているけれど、相手をおもんばかって行動にあらわすことができない)ですばらしい。
 こういう貴種流離譚や、後ろめたい秘密を抱えているところ、実はけっこうな年齢であるらしい(人間と違う異生物なんだから関係ないといえば関係ないんだろうが)ところ、あと、首のチョーカー(命の源である炉を首から下げている)、どれをとってもいい。
 思えば、これみんな(チョーカーは違うか)リュオにもあてはまる要素で、自分の萌えどころを再確認した次第である。

 しかしこの話、サブヒロインのリカがちょっとかわいそ過ぎる。こちらの方は自尊心が高くて自分の中の好意を認めることができないという猫型ツンデレの典型で、メインヒロインが新しい異界を象徴する存在なら、こちらは日常を象徴する存在なんだろうが、まるっきりすれ違いで主人公と関わる機会が持たされない。そういうところも、もっとキャラクターを転がすようなところを描いてほしかったと思うところである。